何日か前までは、ミルは辛そうな表情を見せませんでした。
体はだんだん動かなくなり、さらにガリガリに痩せてきましたが…
おしっこを漏らしたときは、にゃ〜と可愛い声で呼んだり、頭をあげたりして私達にシグナルを送りました。
体温もどんどん下がっていて…39度台から37度台に。電気毛布などでなるべく暖かく。
寝返りするときには、足を伸ばしたり回してあげたり。
ミルは耳を触ってあげると喜ぶので、よく耳を触ってあげました。
でもだんだんゴロゴロしなくなりました。
いつからか瞬きをしなくなった目は、だんだん細くなっていきました。
木曜の朝、病院で点滴を受けて、お昼から体調がさらに悪くなった感じで…
時々、うずくまったり、体を反らしたりして痛みを感じている動きをしました。見ていて胸が痛かったです。
でも、そういうときにも名前を呼ぶと、
瞳孔が大きくなり、しっぽを動かしてしっかり反応してくれました。
金曜の朝。
きつそうなミルの顔を見て… 点滴に行くか迷いました。
でも、やっぱり少し楽になるかなと思って行くことに。
いつも夫が一人で行っていましたが、心配だったので二人で。
でも、点滴に行ったのをすぐ後悔しました。
点滴中に、ミルが体を反らし瞳孔が開いて緊急処置が行われました。
たくさんの先生と看護師が来て、ミルの足の毛を剃って、心臓用の薬を注射しようとしましたが、血管が細くて失敗…
毛だけ剃られて肌が見えるミルの細い足と目を見て、涙しました。
帰り道に死ぬかもしれない
と先生に言われましたが、幸いとその目には合わなかったです。
緊急処置のときに、ミルの体についてしまったアルコール消毒がきつかったので、ミルが好きだった鰹節をおいてあげました。
食べれなくなったミルが喜ぶかはわからないけど、自分だったら消毒の匂いより良いかなと思ったので…
頭もあまり動かず… 横目で私を見たり。
名前を呼ぶと、しっぽをかすかに揺らして。
ミルはどんな気持ちでいたのかな…
ミルを見ていたら、外で元気な声が聞こえてきて、黒い頭が向こうに。
ドアを開けてあげたら、
「大丈夫ですか!?」
と、言うかのようなびっくりした顔で。
クロちゃんの声に少し反応して、ミルの表情に動きがありました。
人の気持ちも猫の気持ちもよく分からないものですが
表情だけは、一緒に過ごしてきた玉三郎やアキよりもミルのことを心配しているように見えました。
金曜日の夜。
ミルが少し穏やかな表情を見せてくれたのは、これが最後でした。
だんだん息が苦しくなって、
夜11時過ぎてから、名前を呼んでも反応もなく、発作みたいな息を繰り返していました。
最後は、寝ているように息を引き取ってくれれば、と願っていましたが… 最悪に辛そうでした。
辛そうなミルの呼吸が2時間ほど続いて…
最後の息をしたミルの顔には、辛さがそのまま残っていましたが、
できるだけ顎と目を閉ざして、普段の綺麗な顔に。
1時間後に、ミルの顔を見たら、まるで寝ているようでした。
少し笑顔にも見えるミルの顔を見ながら、いろんな思い出が浮かび上がり… 寂しくなりました。
2003年のミル。
公園で私のところに飛び込んできて… 18年間の月日を一緒に。
意識がなくなる直前に、名前を呼んだら、
か弱く瞬きをしてくれました。
聞こえてるよ、と言うかのように
残りの力を振り絞るように
私の声にミルは最後までしっかり答えてくれました。